第8回研究発表大会(跡見女子大学)の報告

第8回研究発表大会は,平成10年10月30日(土)・31日(日)の両日にわたり,跡見学園女子大学において,台風接近の報に脅かされながらも,約300人が参加し,盛大・且つ和やかに開催された。

 発表・提案は,自主シンポジウム4本,実行委員会シンポジウム1本,口頭発表25本,事例研究21本,ポスター発表19本,テーブルラウンド12本であった。  
 今回とくに注目された演目は,杉田洋文部省初等中等教育局教育課程教科調査官と本学会國分康孝理事長との「特別活動とエンカウンターとの異同と協働」をテーマにした対談であった。学校教育活動,とくに特別活動でのエンカウンターの位置づけと役割について聴衆の理解を深めたようである。
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大会の運営は,「教育のヒューマナイゼーション」という大会主題の趣旨を生かし,リチュアルに始まり,シェアリングに終わるという流れを尊重し,舞台と観客席,提案発表者と参加者との距離を縮め,全員参加のムードや仲間意識を高めた。
 次に,日程に沿いその概略を紹介する。

 * 第1日目 [#y75a9c93]
第1日目(10月30日)
 まず最初に5つの自主シンポジウムから研究大会がスタートした。詳細については研究発表大会発表論文集を参照していただきたい。
自主シンポジウム 
''①ガイダンスカリキュラムを担う「ガイダンスカウンセラー」の仕事』''
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八並光俊東京理科大学教授の企画・司会のもと,深美隆司松原市立第7中学校教諭,石黒康夫世田谷区立千歳中学校校長,坂本良二高崎市立中学校SC,伊佐貢一上越教育大学準教授がシンポジストとなり,東則孝図書文化社員が進行を務めた。
②「カウンセリングは授業づくりに貢献できるのか
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水上和夫南砺市立福光中部小学校校長が企画し,大友秀人北海商科大学教授,森沢勇富山市立針原小学校校長,水上和夫南砺市立福光中部小学校校長がシンポジストとなり,岡田弘(東京聖栄大学教授司会のもとに提案がなされた。なかでも赤座和子富山市立堀川中学校教諭の模擬授業が注目された。
➂「学級の再構築」
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松崎学・佐藤節子(山形大学)が企画し,鈴木英子(長井市立平野小学校),折笠國康(沢市立第5中学校)が話題提供者,会沢信彦(文教大学)・河村茂雄(早稲田大学),指定討論者となり,佐藤節子(山形大学)司会のもと会は進められた。
④「教育カウンセリングの知見や手法を用いた育児・保育支援を考える」
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冨田久枝(千葉大学)が企画し,小林美佐子(神戸女子大学附属幼稚園),角井都美子(北里大学),前川洋子(東京福祉大学)シンポジストとなり,久木元理恵(北里大学)司会のもとで会は進められた。
⑤実行委員会企画「人として生きる―人間としての社会
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清水井一(東京理科大学)コーディネーターの''もと,
井桁明美(熊谷市立市田小学校)、根岸美幸(熊谷市立吉見小学校),中島 清(熊谷市立大里小学校),青木絹子(熊谷市教育委員会)がシンポジスト,アドバイザー役に村主典英(NPO日本教育カウンセラー協会)がなり,大塚淑美(川島町立西中学校)司会により会は進行した

開会式

片野大会実行委員長挨拶片野先生挨拶
 
 テーマは、國分先生の30年前のご本から選んだ。
シェアリングがあり、お互いが学びあえる学会・研究大会にしていきたい。
國分康孝学会理事長挨拶
國分先生挨拶

1.本学会の目指すリサーチ、教育現場に役立つ研究、発課題を解決 する研究でなくてはならない。
2.本学会の目指すリサーチは、エビデンスに加えて、子どもの人生 についての思想とか哲学を深めていくことが重要である。例えば自 動車学校はスキルを、普通の学校は人生の生き方を学ぶところ、そ れだけに、教育カウンセラーは教育哲学・人生哲学が必要である。
3.シェアリングの豊かな学会、たえずシェアリングをして認知の拡 大集成をはかっていくようにしたい。
4.研究発表の評価を高めようと協会内に学会が発足した。協会と学 会は、営業と開発部のような感じ。協会は研修と認定、学会はリサ ーチが特色とする。相互乗り入れにより、この学会は入会してよか ったと感じる学会にしたい
新井邦二郎 協会副会長・学会常任理事画像の説明

・治すカウンセリングではなく、育てるカウンセリングを進めるためには、問いの立て方や課題の取り上げ方が大切である。例えば、「反抗期からなにを身につけるのか、親はなにを学ぶのか」という問いかけが、子どもを育てるという観点から問いを立てることが肝要である。
 また、人生のつまづきはどういう条件で起こるのか、解釈、理解する研究に加え、「つまづきから何を学ぶのか、何を得るのか」と問いかける現場の役に立つ研究も進めたい。いま一度お互いに吟味していきたい。

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対 談

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片野学会研究委員長司会のもと、「特別活動とエンカウンターの異同と協同」をテーマに、杉田文部科学省教科調査官と國分学会理事長との対談が行われた。
 対談は、はじめに、杉田文部科学省教科調査官により、子どもたちの現状(人間関係の未熟さ。不登校、暴力行為、いじめ。卒業後の離職率等)や特別活動領域の学習指導要領の説明があり、ついで対談が始まった。
 内容については、本ニューズレター32号に掲載していますので、両先生の主な話をまとめて紹介する。

1,人間関係とはどういうものか

 ○SGE:役割と感情交流 
 ○特別活動:他者理解、自律、公共心の精神、感情表現、意志交 流、
2,SGEと特別活動の性格
 ○特別活動:問題解決型。社会に役立つ能力や自己効力感の育 
 生。チームや選手づくり。
 ○SGE:何を自分に感じ、考えるかに気づく力。人づくり。シェア リングの尊重。人と対決したり、人を助たりしながらの共存。人 間幅の拡大。
3,話し合い
 ○特別活動:折り合いをつける、集団決定、クラス全体を配慮。 ○SGE:気楽に話し合える雰囲気作り、自己開示、
4,思想
 ○特別活動:プラグマティズム 
 ○SGE:実存主義
5,係活動
 ○特別活動:当番は校務分掌・責任、係活動はクリエイティブ・ 持ち味。 
 ○SGE:役割遂行、遂行しながら自分や人について何を感じたか。
6,SGEの導入
 ○特別活動:効果は期待。言語力育成の観点からも、SGE、ソーシ ャルスキル、ピアサポートの活用が考えられる。SGEにしてもた だどうなじませるか。また、教科・領域それぞれの目標があるこ と、指導時間が制約されていることこと、発達段階に即している ことを忘れずに。
 ○SGE:全教育活動にふれあいの時間を増やす。気楽に話し合える 雰囲気は集団づくりにも貢献。ジェネリックなSGEと違い、現場 におろしたSGEは特別活動と共通の面が多い。

◆個人発表

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 第1分科会(構成的グループエンカウンター)4名、第2分科会(キャリアガイダンス&カウンセリング4名、第3分科会(対話のある授業)4名、第4分科会(援助体制)5名、第5分科会(問題解決的カウンセリング)6名、第6分科会(4名)に分かれ、合計25本の発表が行われた。上級カウンセラーを目指す人への模範となるな論文が多く見られるようになった。画像の説明

◆事例研究

第1分科会(保護者・担任支援1)3名、第2分科会(保護者・担任支援2)3名、第3分科会(相談室・保健室対応)3名、第4分科会(予防・開発)2名、第5分科会(洋司対応)3名、第6分科会(チーム支援)2名、第7分科会(成年・大学生)2名第8分科会(特別支援)の8分科会に分かれ、合計19本の事例研究が進められた。適切なスーパーバイザーのアドバイスが評判をよび、年々参加希望者が増えている

◆総会 

本ニューズレター32号協会理事会・学会常任理事会報告を参照。
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◆情報交換会

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情報交換会は会場を銘渓会館に移し、約100名余が参加し、第8回大会実行委員会長橋本登事務局長,△北海道教育カウンセラー協会実行委員、△埼玉県カウンセリング学会実行委員、吉田隆江実行委員司会のもと盛大に開催された。
入口で配られた片野智治・坂本良二両氏の秀作写真カードをもとにグループ分けがなされ、見知らぬ人もリチュアルで談笑する和やかな雰囲気が醸し出された。
又、最後に大会主催者の埼玉県カウンセリング学会実行委員、次年度第9回大会を共催する北海道教育カウンセラー協会実行委員が段上に立ち、会場は感謝と期待の内にお開きとなった。

第2日目(10月31日)

*◆ポスター

発表 [#x72afcd9]
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ポスター19本、地方支部20都道府県が参加し、熱心な討議が進められた。ポスター発表は、前半1教室と後半1教室と2会場で開催されたが、惜しむらくは、ポスター間の距離が短く、加えて黒山の人だかりで前に進めず、話は交雑し、落ち着いて提案者の説明が受けられなかったのは残念であった。来年の課題でもある。内容については、口頭発表、事例研究と併せて研究発表大会発表論文集を参照してください。

◆全体講演

演題:「教育のヒューマナイゼーション」

講師:国分康孝Ph.d(日本教育カウンセリング学会理事長''

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1.相手をパーソンとして見る

 戦争中、幼年学校で夕食時にラジオがアメリカのルーズベルト大統領がなくなったと報じた。みんなこころをこめて拍手した。そのとき25歳の大尉が、全員集合の号令をかけた。「アメリカと戦争しているが、敵の大統領が死んだからといって人が死んで拍手するとはなにごとだ。」戦争中であっても、敵をパーソンとして見るということを学んだ。
 ロジャーズはクライエントセンタードを、晩年パーソンセンタードとした。来談者をクライエントとみないで,パーソンとしてみた。きょうくのヒューマナイゼーションとは校長であっても、一パーソンとして一人間として関わるという理解である。私は29歳でアメリカに行ったとき、周囲の教授に「Are you Rogerian?」と聞いて歩いた。研究学科長のジョンソンは「一回ロジャーズに会え。ロジャーズはI am Rogersというはずだ」と。そこで自分を理論の枠でみないで國分康孝とパーソンを打ち出す決意ができた。人間と人間のふれあいが教育の原動力ということを示す一例である。
2.人と人のつながり
 東京理科大学に学生がどうしてきたかを北見芳雄が調査した。発見した事実は,理科の先生がすきだ、その理科の先生が東京理科大学卒だったからこの大学を選んだ」と。大切なのは人と人のつながり。
3・教師の人生哲学
 構成的グループエンカウンターについて。鹿島さんがNHKのテレビに出たとき、SGEがどれくらい有名かNHKが調べたところ、全国100%の教育委員会がSGEを研修に入れていた。人と人とのふれあいを回復しなければ、教育はできないとうすうす気づいているのではないか。立場や役割りを落として残るもの、そこに教育カウンセリングを支えるものとして実存主義がある。教師は読み書きと、生き方を教えるのが主たる仕事である。教師なりに人生哲学を教えるためには、人生哲学を作る必要がある。人生のは目的、人生の意味を考える素養が必要である。ニイルは犬猫に人生の目的がないように 人間には人生の目的はない。生きる目的は自分が作るものだと言っている。子どもなりに人生哲学を持つように指導できるのが教育カウンセラーである。
4.自由 
 人の自由を侵さないかぎり、人は自由に生きる権利がある。これらを妨害するものが4つある。(1)思想(2)グループ(3)役割(4)組織である。
(1) ある思想にクレイジーになると自由になれない。「すべての子どもに好かれねばならない」など。 ニーチェが示唆するように、特定の思想から自由になるということ。 
(2) グループからはみ出す怖さゆえ、グループに迎合して自己疎外になる
(3) 役割。役割に縛られてはならない。エンカウンターではペンネームを使用することによって役割からの解放を体験する。
(4) 組織を守るためにパーソンが殺されることがある。このような場合、自分のクビをかけてでも上司に具申する必要がある。そのような気概をもて。
 組織のおかしさは、組織心理学によって理解することができる。哲学とカウンセリング、組織論これらがヒューマニズムを支えることができる。組織心理学を教育カウンセリングの中に取り入れたほうがよい。

会場でのシエアリング、会場との意見交換
 感想「老人の介護の職場で、辞める人多い。部下を守り、自分も守れる人になりたい。」
 國分先生より、「どうすれば組織は機能的に動くか。そのつぼは、目標が達成できる仕組み(役割関係)が担っているか、組織が成長して、人も成長できる組織かどうか。」とコメントがあった。

◆ラウンドテーブル  

    

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自分のしたいこと、していること」、「自分が考えていること」、「自分の感じていること」を、お互いに自己開示し合うラウンドテーブルは、本会の目玉行事である。 今回は、

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①特別支援教育「明里康弘」、
②不登校「瀬尾尚隆」、
➂生徒指導(ガイダンス)「八並俊彦」、
④学習指導(対話のある授業)「水上和夫」、
⑤特別活動(ソーシャルスキル教育)「清水井一」、
⑥構成的グループエンカウンター(SGE)「吉沢克彦」、
⑦キャリア教育「三島利紀」、
⑧乳幼児・家庭教育「冨田久枝」、
⑨シェアリング方式グループスーパービジョン「大友秀人」
⑩ヘルスカウンセリング「長しのぶ」
⑪スクールカウンセラー・相談員の経験交流「山田留美子」、
⑫いのちの教育(サイコヱジュケーション)「横田 保」
の12部会が開かれた。 (文責 池場 望)
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跡見女子大学屋上からのスカイツリー
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