第3代理事長のビジョン―これからの学会の在り方について―

                   日本教育カウンセリング学会理事長  國分康孝

1 協会(JECA)の役立つ学会(JSEC)にする
(1)個々の教育カウンセラーの実践で公共性に富むものを発掘育成し、JECAの方法・技法を豊かにする。
  例:「教師のためのコミュニケーション事典」
  また、発掘育成の場として、学会発表、学会シンポジウム、研究会などが挙げられる。
(2)教育現場で使える方法・技法・プログラムを学会が開発してJECAに提供する。
  例:SGE、Q-U、シェアリング方式SV、キャリア教育プログラム等 
(3) 協会(JECA)は研修と認定、学会(JCEC)は研究開発。協会と学会の関係は、企業の営業部と開発部の関係にある。

2 学会のアイデンティティを明確にするために、隣接学会との異同を認識すること
 (1)直接的か、間接的か(チーム支援)
 (2)臨床心理学との距離・差異の認識
 (3)教育に特化か、ジェネリックか
 (4)ガイダンス・カウンセリングか、臨床カウンセリングか
  ガイダンス・カウンセリングが私たちのプリンシプルである。識別の視点は次の4点である。
  ①発達課題に関わっているか。
  ②プログラム方式か。
  ③グループアプローチか。
  ④能動的研究か(自己開示、自己主張、環境調整等)

3 リサーチの範囲と方法
 (1)本学会のリサーチの範囲は、発達課題の範囲とする。(学業、進路、人格形成、人間関係、健康)
 (2)リサーチの方法は現場の問題を解くのに役立つもの。すなわちacademic(basic)リサーチでなく、問題解決志向のapplied(operational)リサーチを原則とする。
 (3)本学会のリサーチと見方を得る主なものを列挙する。
  ①事実の発見
   例:実態調査、相関関係の調査、関係性の調査、
    効果測定、因果関係の検証、変容プロセスの発見 
  ②事実・事象の説明概念の開発
   例:アイデンティティ、自己効力感、自己肯定 
    感、被受容感、ジョハリの窓、教育カウンセリング
  ③行動変容の方法・技法の開発
   例:SGE、サポートグループ、シェアリング方 
    式スーパービジョン、簡便内観
 (4)本学会の目玉になるリサーチを育てる
   例:SGEの開発はJSEC、SGEの研修普及はJECA
 (5)個々人のバラバラのリサーチを一つの森に育てていく
   例:サイコエジュケーションのフレームでまとめる。(音楽、作詩等)

4 編集委員会
 (1)リサーチの手順を踏んでいること。会員に役立つ(現場で使える)ことを大切に。
 (2)全員にとって「おもしろくて、ためになり、リサーチの香りのする雑誌」にして欲しい。リサーチの香りとは「事実を踏まえ、論理性のある、概念化された」と  いう意味である。
 (3)論文は何度も書き直させて、結局駄目とならないように。
5 研究委員会
  JECAを発展させる(会員をpuractitioner scientist志向にする)リサーチマインド(リサーチへのなじみ)を育てて欲しい。
6 総務委員会
   事務局長の補助自我として学会運営のツボを絶えずおさえて欲しい。
7 広報委員会
   JECAとJSECの二つの関係の全体像を会員に絶えず描き続けて欲しい。情報とイメージの共有が集団の凝縮性を高めるからである。

 2009年9月から國分康孝が新理事長に就任しました。

日本教育カウンセリング学会は、NOP日本教育カウンセラー協会を母体として2003年に設立された。それゆえ、「協会の役にたつ学会」というのが本学会の特徴である。
 
「協会の役に立つ学会」とは、教育カウンセラーの実践に役立つ「事実の発見」「事実や現象の解釈」「対応策・プログラムの開発」を全会員がシェアする学会という意味である。

ところで、この学会の初代理事長は茨木俊夫(埼玉大学教授)、2代目の理事長は河野義章(東京学芸大学教授)、3代目が國分康孝(東京成徳大学教授)である。事務局長は、片野智治(跡見女子大学教授)を経て、岡田弘(東京聖栄大学教授)が引き継いでいる